AI 時代にポモドーロ・テクニックをやめた - AI が自走する間に Human は休む新しいリズム

重岡 正 ·  Mon, April 13, 2026

25 分作業して 5 分休む。「ポモドーロ・テクニックとの出会い」で書いた通り、この手法を何年も愛用してきました。集中力を維持するには最高の手法で、タイマーが鳴るたびに達成感がありました。

しかし最近、タイマーが鳴るタイミングが「仕事の区切り」と噛み合わなくなっていることに気づきました。理由は明確です。自分がコードを書いている時間より、AI エージェントがコードを書いている時間のほうが長くなったからです。

ポモドーロが合わなくなった理由

ポモドーロ・テクニックの前提は「Human が集中して作業し、定期的に休憩を取る」ことです。25 分間の集中作業と 5 分間の休憩を繰り返すことで、持続的に高い生産性を維持できるという手法です。

これは Human がタスクの実行者である限り、非常に有効でした。

しかし、以前の記事「Harness Engineering — AI エージェント時代のソフトウェア開発を支える新しい規律」で書いたように、AI エージェント時代のエンジニアの仕事は Humans steer. Agents execute.(人間が舵を取り、エージェントが実行する)へと変わりつつあります。

タスクの実行者が AI エージェントになると、25 分のタイマーに従う意味が薄れます。

ポモドーロの前提AI 時代の現実
Human が 25 分集中して作業するHuman は指示を出し、AI が数十分〜数時間作業する
5 分の休憩で脳をリフレッシュAI の作業中が自然な休憩タイミング
タイマーが作業の区切りAI のタスク完了が作業の区切り
4 ポモドーロ(2 時間)で長い休憩AI が自走中はまとまった時間が空く

ある日、Claude Code に大きめのリファクタリングを任せて、25 分のタイマーが鳴ったとき気づきました。「今、自分は何もしていない。AI が働いている。タイマーに従って休憩する意味がない」と。

新しいリズム: AI が働く間に Human は休む

ポモドーロをやめた後に採用したのは、AI の作業サイクルに合わせて Human の時間を使うというリズムです。

graph LR
    subgraph "Human の時間"
        H1["意図・仕様を定義"]
        H2["結果をレビュー"]
    end

    subgraph "AI の時間"
        A1["自走で実装・調査"]
    end

    H1 -- "タスクを委任" --> A1
    A1 -- "完了通知" --> H2
    H2 -- "次のタスクを委任" --> A1

具体的にはこうなります。

  1. Human が意図と仕様を定義する(5〜15 分)
  2. AI に委任して自走させる(数十分〜数時間)
  3. AI が自走している間、Human は別のことをする
  4. AI の完了通知を受けてレビューする(5〜15 分)
  5. 1 に戻る

AI が自走している間の「別のこと」は大きく 2 つあります。

  • Human にしかできない仕事を進める: 仕様策定、ステークホルダーとの対話、アーキテクチャの意思決定、採用面接、1on1
  • Human なので休む: 散歩、コーヒー、食事、ストレッチ、就寝

以前「AI 障害が教えてくれたこと:AI はツールからチームメイトへ」で書いた通り、AI はもはやチームメイトです。チームメイトが仕事をしている間、自分は別の仕事をするか、休む。それだけのことです。

AI になるべく長く自走してもらう

このリズムの鍵は、AI になるべく長時間、自律的に動いてもらうことです。「AI コーディング CLI にフルパーミッションを与えて自走させる」で比較した通り、Claude Code と Codex にはそれぞれ自律実行モードがあります。

しかし、自律実行モードを有効にするだけでは不十分です。AI が途中で迷ったり、方向性を見失ったりすると止まってしまいます。AI が長時間自走し続けるためには、明確な指示と環境の整備が必要です。

そこで、各 AI エージェントに長時間の自走を可能にする autopilot スキル を作成しました。

Claude Code の autopilot スキル

Claude Code では、スキルファイルと /loop コマンドを組み合わせて autopilot を実現しています。

スキルの配置先は .claude/skills/autopilot/ です。

<!-- .claude/skills/autopilot/SKILL.md -->
# Autopilot Skill
 
## 概要
長時間の自律実行を前提とした開発タスクの遂行スキル。
Human の介入なしにタスクリストを順番に処理する。
 
## ワークフロー
1. タスクリストを受け取る
2. 各タスクについて以下を実行:
   - 関連ファイルを読み取り、現状を把握する
   - 実装またはリサーチを行う
   - テストを実行して動作を検証する
   - 変更内容をコミットする
3. 全タスク完了後、サマリーを出力する
 
## 制約
- 各コミットは 1 つの Issue に対応させ、コミットメッセージで Issue を参照する
- テストが失敗した場合は修正を試みる。解決できない場合は Issue を作成して次のタスクへ進む
- 既存のアーキテクチャパターンに従う
- CLAUDE.md の規約を遵守する

このスキルを --permission-mode auto/loop と組み合わせて使います。

# auto モードで起動し、スキルに従ってタスクリストを処理
claude --permission-mode auto
 
# セッション内で /loop を使って自律実行
> /loop タスクリストに従って順番に処理してください

/loop は Claude Code の自律ループ機能で、タスクが完了するまで自動的に処理を継続します。auto モードと組み合わせることで、パーミッションプロンプトに遮られることなく長時間の自走が可能になります。

Codex の autopilot スキル

Codex では、AGENTS.md にスキル相当の指示を記述し、--full-auto フラグで自律実行します。

<!-- AGENTS.md(抜粋) -->
## Autopilot Mode
 
When given a task list prefixed with `[autopilot]`:
1. Process tasks sequentially
2. Run tests after each change
3. Commit per issue, referencing the issue in the commit message
4. If a task fails, create an issue and move on
5. Output a summary when all tasks are complete
# フルオートモードで起動
codex --full-auto
 
> [autopilot] 以下のタスクを順番に処理してください:
> 1. ...
> 2. ...
> 3. ...

Codex の --full-autoワークスペース内の読み書きとコマンド実行を自動承認するモードです。ワークスペース外へのアクセスには制限がかかるため、安全性を保ちながら自律実行できます。

スキル設計のポイント

autopilot スキルを設計する際に重視しているのは、以下の 3 点です。

ポイント理由
失敗時のフォールバックAI が詰まって止まるのを防ぐ。解決できなければ Issue を作成して次へ進む
1 コミット 1 Issueコミットと Issue を関連付け、変更の背景を追跡可能にする
テストの自動実行AI 自身に品質を検証させ、Human のレビュー負荷を下げる

Harness Engineering」の記事で紹介した OpenAI の実践でも、単一の Codex ランが 6 時間以上タスクを処理し続けることがあると報告されています。AI が長時間自走できる環境を整えることは、Harness Engineering の実践そのものです。

Human は何をするのか

AI が自走している間、自分が意識的に取り組んでいることがあります。

Human にしかできない仕事

AI ファーストな開発組織への進化」で書いた通り、AI が効率化する領域が広がるほど、Human が担うべき領域が明確になります。

  • 仕様と意図の定義: 何を作るのか、なぜ作るのか。これは Human が決めることです。「Block「From Hierarchy to Intelligence」から学ぶ」でも触れましたが、AI が情報のルーティングを担う時代でも、意思決定の最終責任は Human にあります
  • ステークホルダーとの対話: 顧客との会話、チームメンバーとの 1on1、採用面接。Human 同士のコミュニケーションは AI に委任できません
  • Harness の改善: AI がミスをするたびに、二度と起きないよう仕組みを整える。CLAUDE.md や AGENTS.md の更新、テストの追加、linter ルールの整備
  • AI の出力のレビュー: 「AI 時代の罠 ワークスロップ」で議論したように、AI が生成したコードの品質を担保するのは Human の責任です

Human なので休む

これは冗談ではなく、真面目な話です。

AI エージェントは疲れません。24 時間 365 日、同じ品質で動き続けます。一方、Human には休息が必要です。AI が自走している時間は、Human にとって最高の休憩時間です。

AI が 30 分かけてリファクタリングしている間に散歩に出る。戻ってきたら結果をレビューして次のタスクを委任する。この方が、ポモドーロで 25 分ごとに 5 分休むより、はるかにメリハリのある働き方です。

AI の自走力を上げるために Human が頑張ること

AI に長時間自走してもらうためには、事前の Human の投資が重要です。

1. CLAUDE.md / AGENTS.md の充実

AI フレンドリーなコードへリファクタリング」で書いたように、AI が理解しやすい環境を整えることは、AI の生産性を直接向上させます。

プロジェクトの規約、アーキテクチャの制約、テストの実行方法。これらを CLAUDE.md や AGENTS.md に明記することで、AI が迷わず自走できるようになります。

2. テストの充実

テストがあれば、AI は自分の変更が正しいかを自己検証できます。テストがなければ、AI は「これで合っていますか?」と Human に確認するか、検証なしで進むしかありません。

テストは AI の自走力に直結します。

3. スキルの蓄積

繰り返し発生するタスクはスキルとして定義しておきます。「Gemini CLI のスキルで動画から議事録を自動生成する」や「gh-security-scan」のように、ワークフローをスキルとして定義しておけば、同じパターンのタスクを何度でも AI に委任できます。

スキルは oh-my-skills リポジトリに蓄積しており、Claude Code、Codex、Gemini CLI の 3 つのプラットフォームに対応しています。

4. 複数 AI の並列活用

3 つの AI に同じ質問、満場一致なら採用する MAGI システム的アプローチ」で紹介した複数 AI の活用は、autopilot ワークフローでも有効です。

Claude Code にリファクタリングを任せつつ、Codex に別の機能実装を任せる。「Claude Code、Codex、Gemini のマルチプラットフォーム戦略を比較する」で書いた通り、各ツールにはそれぞれの強みがあります。複数の AI を並列に自走させることで、Human の待ち時間をさらに有効活用できます。

まとめ

ポモドーロ・テクニックは素晴らしい手法です。しかし、その前提は「Human がタスクの実行者である」ことでした。AI エージェントがタスクの実行者となった今、25 分刻みのリズムに従う理由がなくなりました。

代わりに採用したのは、AI の作業サイクルに Human のスケジュールを合わせるというシンプルなリズムです。

  • AI になるべく長時間自走してもらうために、autopilot スキルと自律実行モードを活用する
  • AI が自走している間、Human は Human にしかできない仕事を進める
  • Human なので、疲れたら休む。AI は疲れない

Harness Engineering」の記事で紹介した Mitchell Hashimoto の 6 段階フレームワークの最終段階は「常にエージェントを動かす」でした。AI が常に動いている状態を作れたなら、Human のリズムはもうタイマーではなく、AI のタスク完了通知が刻むことになります。

タイマーの代わりに、AI の完了通知。それが、自分の新しいポモドーロです。

以上、ポモドーロ・テクニックをやめて AI と新しいリズムで働いている、現場からお送りしました。

参考情報