「プロ野球戦力外通告 2025」を見て考えた、2026年に迫る「エンジニア戦力外通告」

重岡 正 ·  Fri, January 2, 2026

年の瀬の風物詩ともいえるテレビ番組「プロ野球戦力外通告」。トライアウトに挑む選手、家族の葛藤、そして非情な現実。毎年、胸を締め付けられる思いで見ていますが、今年は特に他人事とは思えませんでした。

なぜなら、私たちソフトウェアエンジニアの世界にも、静かに、しかし確実に「戦力外通告」の時代が近づいていると感じるからです。その引き金を引くのは、2025年にさらなる進化を遂げた「AI」です。

AIの進化がもたらす「審判」の登場

2023年から2024年にかけて、生成AIは私たちの働き方を大きく変えました。単純なコードスニペットの生成から、ドキュメント作成、テストコードの自動生成まで、今やAIは開発現場に欠かせないパートナーです。

では、2025年はどうだったでしょうか?AIは「アシスタント」から「プレイヤー」、あるいは「監督」に近い役割を担うようになりました。具体的には以下のような進化が見られました。

  • 要件定義から実装までの一貫したサポート: 曖昧な自然言語の要件から、具体的な設計、コード、テスト、デプロイ構成までをAIが提案・生成する。
  • 自律的なリファクタリングとバグ修正: 静的解析ツールのように問題を指摘するだけでなく、自らコードを修正し、プルリクエストを作成する。
  • 高度なプロジェクト管理支援: 開発の進捗をリアルタイムに分析し、ボトルネックを特定、リソースの再配分を提案する。

こうなると、Humanはただ言われた通りにコードを書くだけの「コーダー」としての価値は、残念ながら大きく下落せざるを得ません。

「エンジニア戦力外通告」を受けるのは誰か?

では、2026年以降「戦力外」と判断されてしまうのは、どのようなエンジニアでしょうか。それは、プロ野球の世界で「一芸だけでは通用しなくなった」選手像と重なります。

  1. 「監督の意図」を読めないエンジニア: 目の前のコードを書くことに終始し、その機能が「なぜ」必要なのか、ビジネスやユーザーにどのような価値を提供するのかを理解しようとしない。
  2. 「チームプレー」ができないエンジニア: AIが個人の生産性を上げるからこそ、人間同士の高度なコミュニケーション、議論、意思決定といったソフトスキルの重要性が増します。これを軽視すれば、チームの生産性を下げる存在と見なされてしまいます。
  3. 「新しい道具」を使いこなせないエンジニア: AIという革命的なツールを食わず嫌いしたり、脅威とみなして遠ざけたりする。これでは、最新のバットやグローブを拒否する選手と同じです。

AI時代の「一軍エンジニア」であり続けるために

私たちはどうすれば「戦力外」を回避し、第一線で活躍し続けられるのでしょうか。それは、AIを「審判」や「ライバル」ではなく、最高の「コーチ」や「チームメイト」として捉え、自らの価値を再定義することに他なりません。

  • AIを使いこなす「司令塔」になる: AIに何をさせれば生産性が最大化するかを考え、的確な指示(プロンプト)を与える能力を磨きましょう。AIに単純作業を任せ、人間はより創造的で、戦略的なタスクに集中するのです。
  • 課題発見・解決能力を磨く: 「何を作るか」はAIが提案できても、「何を解決すべきか」という最も重要な問いを発見するのは人間の役割です。ビジネスのドメイン知識を深め、ユーザーのペインに寄り添い、本質的な課題を見つけ出す能力こそが、これからのエンジニアの核となります。
  • 技術の「翻訳家」になる: エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャー、経営陣など、異なる専門性を持つ人々の間に立ち、技術的な選択肢とそのビジネスインパクトを分かりやすく説明し、合意形成を促す。この「翻訳」能力は、AIには決して真似できません。
  • 常に学び続ける「探求者」である: これはいつの時代も変わりませんが、変化のスピードが速まるほどにその重要性は増します。特定の技術だけでなく、アーキテクチャ、ソフトウェア工学、チームビルディング、そしてAIそのものについて、常にアンテナを張り、学び続ける姿勢が不可欠です。

おわりに

「プロ野球戦力外通告」で描かれる選手たちの姿は、いつ見ても胸が痛みます。しかし、彼らの多くは、野球以外の道で新たな人生を力強く歩み始めます。

私たちエンジニアにとっての「戦力外通告」も、キャリアの終わりを意味するわけではありません。むしろ、これまでのやり方を見直し、新しい時代のエンジニアとして生まれ変わるための「号砲」と捉えるべきなのかもしれません。

2026年がスタートしました。AIという圧倒的な変化の波を乗りこなし、自らの手で未来を掴むために。今この瞬間から、自分自身の「戦力」を冷静に見つめ直し、次の一手を考えてみてはいかがでしょうか。

以上、「プロ野球戦力外通告 2025」を見て「エンジニア戦力外通告」について考えた、現場からお送りしました。

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