GitHub の複数アカウント所有は規約違反 — 仕事で別アカウントの作成を求められたので丁重にお断りした話
とある企業の方から、「弊社専用の GitHub アカウントを新規に作成してほしい」と依頼されました。しかしこれは GitHub 利用規約 に抵触するため、丁重にお断りしました。その経緯と根拠、そして依頼側にも損のない正しい代替案を整理します。
何が起きたか
依頼の要点は「既存の個人アカウントを Organization に招待するのではなく、その企業専用の別アカウントを新規に作成してほしい」というものでした。よく見かける依頼ではありますが、GitHub の利用規約に照らすと個人利用者が引き受けてはいけない依頼です。
先に結論を言うと、この 2 つ目のアカウント作成を引き受けた瞬間に、規約違反の当事者は依頼した企業ではなく、アカウントを作った個人(つまり私)になります。ですから、丁重に理由を説明したうえでお断りしました。
GitHub 利用規約 セクション B.3 の規定
GitHub 利用規約 のセクション B「アカウント条件」の B.3「アカウントの要件」に、次の文言があります。
1 人の個人または 1 法人が維持できる無料アカウントは 1 つのみです(マシン アカウントの利用も許可されていますが、それはマシンを実行するためだけに使用してください)。
英語版の GitHub Terms of Service では次のように記述されています。
One person or legal entity may maintain no more than one free Account (if you choose to control a machine account as well, that’s fine, but it can only be used for running a machine).
この条項は、無料アカウントを持てる数を「1 人の個人につき 1 つ」に明確に制限しています。既に個人アカウントを持っている人が依頼企業のためにもう 1 つ無料アカウントを作れば、それだけで規約違反となります。
2026 年 5 月時点の Site Policy リポジトリ と GitHub Docs の最新版のいずれを見ても、この条項は変更されていません。
GitHub 公式ドキュメントの推奨
利用規約とは別に、GitHub は公式ドキュメントの Types of GitHub accounts(日本語版) でも次のように案内しています。
Many people use one personal account for all their work on GitHub.com, including both open source projects and paid employment.
If you’re currently using more than one personal account that you created for yourself, we suggest combining the accounts.
「多くの人が、OSS 活動でも有償雇用の業務でも、GitHub.com 上のすべての作業に対して 1 つの個人アカウントを使っています」「もし自分用に 2 つ以上の個人アカウントを作ってしまっているなら、統合することを推奨します」という内容です。
つまり GitHub は、利用規約でハードに禁じるだけでなく、ドキュメント上でも「個人アカウントは 1 つに統合すべき」というスタンスを明確に打ち出しています。この立場は 2026 年 5 月時点でも変わっていません。
例外はマシンアカウントだけ
規約には「マシンアカウント」の例外があります。これは CI・ボット・自動化スクリプトなどが GitHub を叩くための非人間アカウントで、次の性質を持ちます。
- 特定の人間が責任者として運用する
- 特定のマシン・自動処理のためだけに使う
- 個人アカウントとは別に、無料で 1 つだけ持てる
今回依頼された「その企業の業務専用の GitHub アカウント」は、人間である私自身が Pull Request を出したりレビューコメントを書いたりするための人間用アカウントであって、マシンアカウントではありません。したがってこの例外には該当しません。
正しい方法は Organization メンバーシップ
企業側が「業務専用の隔離された作業環境がほしい」と考えている場合でも、GitHub の設計上、正しい解決策は新規アカウントではなく既存の個人アカウントを Organization に招待することです。
- 私の個人アカウントを、その企業の GitHub Organization にメンバーとして招待する
- 業務に必要なリポジトリだけを、その Organization 配下で権限付与する
- 業務終了時には Organization から remove すれば、業務リポジトリへのアクセスは即座に切れる
有償プラン(GitHub Team・GitHub Enterprise)の場合、その組織に招待された私の個人アカウントは「その組織にとっての有料シート」として扱われます。組織単位の課金と権限管理は Organization 側で完結する設計なので、そもそも個人アカウントを増やす必要はありません。
会社支給のメールアドレスをその個人アカウントに追加しておけば、コミット時の author も業務メールに切り替えられます。SAML SSO・SCIM・Audit Log のような Enterprise 向け機能も、すべてこの Organization メンバーシップに紐づく形で機能します。
どう断ったか
上記を踏まえて、依頼元にはおおむね次のように伝えました。
- GitHub の利用規約で、1 人の個人が持てる無料アカウントは 1 つと定められている
- GitHub 自身も公式ドキュメントで「個人アカウントは 1 つに統合すること」を推奨している
- したがって、業務用に新しい個人アカウントを作ることはできない
- 代替として、既存の個人アカウントを御社の Organization に招待してほしい
- 業務用メールアドレスは個人アカウントの追加メールとして登録できるので、コミット author も業務メールに切り替えられる
依頼側の担当者としては「他の従業員と同じフローを踏んでほしい」というだけで、規約違反を強要する意図があったわけではありません。実際、経緯を説明したうえで Organization 招待に切り替えていただき、話は円満に落着しました。
まとめ
- GitHub 利用規約 B.3 は「1 人の個人または 1 法人が持てる無料アカウントは 1 つ」と明記している(2026 年 5 月時点で不変)
- 公式ドキュメントも「複数の個人アカウントは統合すべき」と推奨している
- 例外は CI・ボット向けのマシンアカウントのみで、人間用のセカンドアカウントは想定されていない
- 業務用アカウントの正解は Organization メンバーシップであって、新規個人アカウントではない
- 依頼側に悪意がなくても規約違反は当事者である個人の責任になるので、丁重に断って正しい代替案を提示するのがよい
「業務専用の GitHub アカウントを作ってください」という依頼は現場でしばしば発生します。対応する側の個人としては規約を守る責任があり、Organization 招待という正しい手段が用意されている以上、規約違反を犯す必要はどこにもありません。
以上、GitHub の複数アカウント所有が規約違反であることを 2026 年時点の公式情報で確認しつつ、業務からの依頼を丁重に断った経緯を整理した、現場からお送りしました。